使命感や想いを共有しながら、大都市型MaaSを具現化するアプリを開発していく。東京メトロmy!アプリ

東京メトロmy!アプリ

東京地下鉄(以下、東京メトロ)が進めている大都市型MaaS (Mobility as a Service)「my!東京MaaS」。
東京メトロはもちろん、他社の鉄道、シェアサイクル、タクシー、コミュニティバス、航空などさまざまなモビリティと連携、「パーソナライズド」「リアルタイム」「更なるネットワークの連続性の追求」をキーワードに、「移動のしやすさ」や「自分好みの東京」の実現を目指す。
これを具現化する手段のひとつが、スマートフォンアプリ「東京メトロmy!アプリ」である。メトロアドエージェンシー(以下、メトロアド)は東京メトロとともに、このアプリの開発を進めている。

※社員情報は取材時(2021年10月現在)のものです。

※ICT戦略部は、2022年4月より「デジタルイノベーション推進部」に部署名が変更されています。

※本記事で紹介している機能は取材当時のもので、2022年12月現在はさらに便利な機能が搭載されています。

七條

東京地下鉄株式会社経営企画本部 ICT戦略部

榊原

東京地下鉄株式会社経営企画本部 ICT戦略部

丸山

株式会社メトロアドエージェンシーデジタル

2008年 中途入社

大嶋

株式会社メトロアドエージェンシーデジタル

2017年 中途入社

2015年から、キャッチボールをしながら機能拡張を進めてきた。

七條:私はモビリティ推進担当として、my! 東京MaaSを中心にモビリティ連携の取り組みを推進しています。
東京メトロでは当初、運行情報や時刻表をWebサイトから提供していましたが、より機能を充実させるためにアプリ開発に着手し、東京メトロ公式アプリ「東京メトロアプリ」をリリースしました。2015年からはメトロアドさんと一緒に開発を行っています。

丸山:私はICT戦略部専属アカウントとして、2015年からプロジェクトをご一緒しています。
私たちメトロアドが参加したのは、いわばアプリの「第2世代」からです。
現在の東京メトロmy!アプリは第3世代にあたり、運行情報、時刻表、電車位置のリアルタイム把握などに加えてMaaSならではの機能を搭載しています。

七條:MaaSならではの機能としては、シェアサイクルやタクシーなど他のモビリティサービスと連携した経路検索やリアルタイム混雑状況確認機能、さらには保険会社とコラボした健康促進の取り組みなどもあります。
リリース以来機能拡張を続けてきましたが、どの機能を搭載するかについてはメトロアドさんからご提案いただいたものもあります。

丸山:東京メトロさんからのオーダーで具現化できるものをご提案、キャッチボールしながら改良を進めていったイメージですね。

榊原:私はWebのランディングページやポスター制作など、宣伝広告関係を主に担当しています。現在はあらゆるユーザーを対象にアプリの使い方を伝えるプロジェクトを進めています。
メトロアドさんとは、宣伝広告でも一緒にプロジェクトを進めています。広告会社として、この領域ではご提案をいただくことが多いですね。
この前も大嶋さんには、中づりポスターなどをご提案いただきました。とても好評でした。

大嶋:ありがとうございます。
私は今年度から商業施設関係の販促部署から本プロジェクトに参加しました。本プロジェクトでは中づりポスターやランディングページなどをメインで担当しています。

コロナ禍でリリース、1年で100万DLを記録。

七條:東京メトロmy!アプリのリリースは2020年8月。本当は7月の予定だったのですが、新型コロナウィルスの蔓延で仕様変更を余儀なくされました。混雑情報をより詳しくお客様に示す必要性が高まり、機能を強化するためリリースを遅らせたんです。
その決定があったのは7月。ギリギリのタイミングでの仕様変更だったのですが……。

丸山:仕様変更があるかもしれないと東京メトロさんから言われていたので、準備は進めていました。それに、コロナ禍で混雑情報を強化しなければならないことは、鉄道事業者にとっては必然だと理解していたので、やるしかないと。

榊原:メトログループとして、使命感を共有、事前準備をしていただいたのは心強かったです。

丸山:その時期は他の鉄道会社も同じ対策を進めていてエンジニア確保が大変でしたが、アプリ開発会社の方にも鉄道事業に関わる意義や継続性、公共性の大事さなどを説き、協力していただきました。

七條:東京メトロとしても、鉄道事業者が提供する混雑情報として正確であることは必須です。そのため、そもそも混雑の状況を何段階に区切り、どこで線引きするかなどから社内で何度も議論し、決めていきました。また、乗車人数なども乗り換えサービスでは行えないような方法で精緻に判定しています。他社からの乗り入れ数などは、私自身が現地に赴いて調べました。

丸山:メトロアドとしては、画面上での視認性を高めるため、アイコンひとつにしても色、形の検討など、お客様に分かりやすい仕様とし、東京メトロさんで承認いただくための議論を重ねました。さらに交通事業者が提供するアプリとして、ユニバーサルデザインにも配慮しています。

榊原:メトロアドさんのおかげで、最終リリースに間に合わせることができました。

七條:現在までに120万DLを記録。鉄道会社のアプリとしては上々の数字です。

榊原:毎月10万くらい順調な伸びを続けています。引き続き、メトロアドさんと利用促進策を取り組んでいきましょう。

「当然」「当たり前」を実現、維持していく難しさ。

丸山:東京メトロmy!アプリは、アプリ利用のきっかけが鉄道事業者としてはネガティブということもあります。例えば、台風などで電車遅延があるとアプリ利用が大幅に増えます。
社会的に意義のあるプロジェクトとはいえ、「社会に与えるインパクト」という視点で考えると手放しで喜べないことも多いんです。

大嶋:確かに、販促などの広告コミュニケーションの観点とは違って、モノが売れればいい、サービスが認知されればいいというものではないですからね。
また、大きな目的やビジョン実現のためのプロジェクトだからこそ、ゴールに近づく実感が毎日の業務ではなかなかわかない難しさもあります。

丸山:それに、鉄道事業者が提供するアプリとして、ユーザーは「正確で当たり前」とか「リアルタイムで見れて当然」と思っています。けれど、その「当然」「当たり前」を実現、維持していくのはとても難しい。
「当たり前」「当然」を提供し続けるという難題に、東京メトロさんやアプリ開発会社と想いや使命感を共有しながら、試行錯誤を続け、ノウハウを積み重ねる毎日です。

榊原:「地下鉄は遅延しないのが当たり前」ということを、我々が日々の努力で実現しているのと同じですね。

丸山:そうですね。もともと東京メトロさんは、そういう「当然」「当たり前」を休むことなく提供しています。
その意義や大変さをグループ企業として十分理解しているつもりでしたが、このアプリ開発を通じて再認識しました。東京メトロさんのパートナーとしてビジネスをやっていく覚悟を、改めて感じています。

七條:試行錯誤をしていただいている成果は、出始めていると思います。
例えば、以前、地震でダイヤに乱れが生じて急に大量アクセスがあったときに、メトロアドさんにはシステムを作る段階でそのような突発的な大量アクセスにも耐えられるシステム設計をしていただきました。おかげでシステムダウンすることはありませんでした。

これからも広告会社ならではのマーケティング力に期待。

七條:現在東京メトロmy!アプリは、健康応援、ビジネスを加速させる、東京を「楽しむ」など、さまざまなMaaSテーマの実現に取り組んでいます。直近では、他社線に乗り入れの際も到着時間を提供するなど、移動のしやすさを追求しています。

榊原:一方、乗り換え案内など鉄道事業者以外も情報サービスを提供している中で、利便性だけでなく、鉄道事業者としてどういう機能を提供していくかを常に考えていく必要があります。

七條:そんな中でメトロアドさんには、新たな機能のご提案や、それをどうUI(ユーザーインターフェース)に具現化するかなどで、引き続きご協力いただければと思っています。

榊原:私はメトロアドさんに、広告会社ならではのマーケティング力に期待しています。
これまでも、メトロアドさんにユーザーニーズをとらえるマーケティング力があったからこそユーザー視点でサービスや機能を充実させていけたと思っています。

丸山:ありがとうございます。確かに、ユーザーにいかに使ってもらえるかというところは、マーケティングに長年取り組んできたメトロアドが得意とするところです。
これからも、「当然」「当たり前」を実現、維持していくという交通事業者の使命感、想いを東京メトロさんと共有しながら、都市型MaaSを具現化するご提案をしていきたいと思います。

榊原:それに、アプリ制作からマーケティングまですべて担当いただけるのもやはり大きい。広告宣伝の部分でアプリと足並みが揃ったものを展開できますからね。
これからもアプリ開発、広告制作の両面で、いいご提案を期待しています。