STORY 03
「最も熟知するとは、どういうことか」からはじまった
行動DNAアナライザー
OUTLINE
「行動DNAアナライザー」は、2021年9月にローンチしたサービスである。
東京メトロ圏内にいる人々の行動データを、スマートフォンアプリと連携させたWi-Fiログ、Beaconログ、GPSなどから取得。地上はもちろん電波の届きにくい地下空間にいる人々のデータまで補足可能である。人の属性だけでなく、商業施設を訪れる頻度、どんな志向で行動しているかまでを、PCなどのダッシュボード(さまざまなデータを視覚化して表示、分析するためのツール)上で確認、分析できる。
リアル行動データに基づき推定された東京メトロの各駅・路線別の利用者のデモグラフィックデータ(性別、年代、居住エリア・勤務エリアなど)、および興味関心の傾向を偏差値で表現した「行動DNA」をダッシュボード上で解析可能に。
「行動DNA」から従来よりも具体化されたペルソナ設計ができるように。そのことから緻密かつ粒度の高いコミュニケーション戦略の立案からメディア・プロモーション施策など包括的なプランニングが実現可能になっている。
このプロジェクトを手掛けた統合メディア部・堀江、岡に話を聞いた。
岡
統合メディア部
2016年 中途入社
堀江
統合メディア部
2016年 新卒入社
リアル行動データの活用こそが、将来的に強みになると感じていた
堀江
当社のバリューとして「TOKYOを最も熟知する会社」と掲げていますが、最も熟知しているとはどういうことなんだろうという部分から考えていきました。
TOKYOを最も熟知するとなった時に、東京のビジネスパーソンのことを本当にわかっているのかと言われると、データを含め何も持っていない状態でした。
働いている人たちの実際の動きや、どんな人がいてどんな興味関心があるのかを明らかにした上で、ファクトデータに基づいて提案できたほうがTOKYOを最も熟知していることなんじゃないかという所から、プロジェクトはスタートしました。
岡
従来から東京メトロの乗降者数や交通調査の結果、アンケート調査に基づいた属性データは持っていました。ただ、調査時点でのデータのため、リアルタイムのデータではないこと、人の動きや位置情報などの実際のデータを把握はできていなかったので、そこを把握することに意義があると考えていました。
意外な発見がデータから見える、自信をもって提案できる
岡
例えばですが「行動DNAアナライザー」だと、渋谷駅で働く20代後半のビジネスパーソンが休日にどこに訪れているのかなど明らかにできるので、ターゲットの解像度が上げることができてコミュニケーションの提案などに活用ができます。東京の人の動きや興味関心などが、事実データから導き出すことができるのが強みの一つかなと思います。
堀江
交通広告に限った話ですが、クライアントが美術館で展示会を実施したいとします。今までは主要な美術館がある駅での広告出稿がセオリーとしてありました。美術館が近くにある駅だと、ある程度マッチするんじゃないかというような想像や仮説です。実際に当社が持つ「行動DNAアナライザー」だと、駅ごとに偏差値という形でデータが出せるので、美術館に興味があるかたは意外にもA駅に多くて、A駅に広告を出したほうが美術館と親和性が高いですという提案ができるようになりました。
どんなアウトプットが出せるのか、そこから見えた「行動DNAアナライザー」の可能性
堀江
データビジネスに知見のあるメンバーを中心に部門横断でプロジェクト化したことで、フラットな立場で互いが意見を出し合って最終的なダッシュボードの構想や、それを活用した提案イメージをもちながら、ディスカッションを進めていきました。
取得したデータをどんな軸で比較するのか、どうフィルタリングするかでデータの見え方が変わってくるため、まだまだ「行動DNAアナライザー」のポテンシャルを感じています。
当社としては交通広告を販売するためのエビデンスとしても活用していますが、どちらかというとメインは東京のエリアマーケティングをどう活性化するかというところに活用できたらいいなと思っています。
岡
アウトプットを限定していないので、施設誘致・新規事業計画に活用することもできるので、地域活性化や都市開発の姿が変わっていくかもしれません。今後はひとの実際の動きや、興味関心を把握する手段を得たことをどのように生かしていくのか、ということが重要だと考えています。ひとの気持ちを動かすこと、行動を促すためには、どのような施策や企画がよいのか、その部分はまだまだ手探りです。データと提案の相乗効果には、まだまだ伸びしろがあると思います。
進化しつづけるデータダッシュボード、活用の仕方を広めていく
堀江
現状は駅起点でのデータ分析になっていますが、今後は駅を利用していただいている海外旅行者、他のデータプラットフォームとの連携を考えています。
並行しながら企業のマーケターの方に向けて「行動DNAアナライザー」を知っていただき利用いただけるように、外部への周知活動も動き始めています。良くも悪くも、東京メトロの仕事しかやっていない広告代理店なんじゃないの?というようなイメージを持たれがちですが、いい意味でそのイメージを裏切れるような一つのきっかけになるサービスかと思います。
岡
今年度はトライアルで金融データを活用した分析を行ってみました。各路線でどのジャンルの購買頻度や購買金額が高いのかなど、そういったデータを可視化できたので他にも連携できるデータや切り口によってダッシュボードが進化しつづける未来が見えたと思います。
当社の存在意義を体現することと、伸ばしていきたい部分が一致した。
堀江は「スピード感をもって、データを利活用していかなければいけないのでは。という危機感が社内にありました」と語る。競合他社の動きも含めてそういった危機感が、データを作るという基盤を後押しする要因になったそうだ。
ただ、むやみにデータビジネスをやりますということでもなく、当社の存在意義を体現するということと、危機感が一致したからこそプロジェクトの進行が早かったと分析していた。
岡は、東京の発展に貢献するためのデータを作り上げる・提供するのも当社の役割の一つだと話す。データをマネジメントするにあたって、新しい考えやフレッシュな頭を持っている人がこのプロジェクトに参画してくれると、より発展的な展開が期待できると語っていた。